養生草紙 第二十七巻:時を刻まぬ船酔い、自分への恨み言

いやはや、参った。  病(やまい)との付き合いは、いつだって一筋縄ではいかんもんやと分かっていたつもりじゃが、今回は少々手強い波に飲み込まれてしもうたようじゃ。

明け方に感じたあの静かなモヤモヤは、昼を過ぎても引くどころか、じわじわとその正体を表し始めた。吐き気止めを飲んだんじゃから、昼頃にはスッと楽になるもんやと高をくくっとったんじゃが、現実は甘うなかったな。だんだんと、あの嫌な「船酔い」のような気持ち悪さに変わっていったんじゃ。

目を閉じれば、子供のころに乗ったフェリーの記憶が蘇る。  頭の芯がぼうっとして、心臓は落ち着かず、腹の底から正体の知れんムカムカがせり上がってくる。まさに全身がふわふわと、浮き足立ったような、なんとも言えん不快感じゃ。

「いつまで続くんや、これ……」

少しでもやり過ごそうと、じっと目をつぶって、嵐が過ぎ去るのを待つ。  もう一時間くらいは経ったじゃろうか。そう思って、おそるおそる時計に目をやれば、なんとまだ十分しか経っておらん。この十分の、なんと長く重たいことか。時間が止まってしもうたんやないかと疑いたくなるほどじゃ。

こうも苦しい時間が続くと、つい心に弱気が忍び込んでくる。  ワシは、何かバチが当たるような悪いことでもしたんじゃろうか。そんな風に、自分を恨めしく思うてしまう。普段は「人生のスパイス」なんて格好をつけとるワシじゃが、今ばかりは、情けないことにそんな余裕もありゃあせん。

けれど、船酔いだっていつかは港に着けば終わるもんじゃ。  今はただ、この荒波の中で静かに息を整えるしかない。自分を責めたって病気が治るわけでもなし、今は「しゃあない、こんな日もある」と、諦め半分で横になっとります。

明日の朝には、凪(なぎ)の海が広がっとることを願って。  皆も、体に異変を感じたら無理は禁物じゃよ。今夜はワシも、この時間の流れに身を任せて、ボチボチと耐えていくことにするわ。

拙い話にお付き合いくださり、感謝の極みじゃ。
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