養生草紙 第三巻:調べ物(しらべもの)の一日

機械の音に追われて

えー、その日は朝から晩まで、まる一日「検査漬け」でござんした。 レントゲンにMRI、CTと、名前だけは聞き及んでいた「電脳からくり」の数々に、次から次へと放り込まれる。

白一色の部屋を渡り歩くたびに、自分の体が少しずつ自分のものではなくなっていくような、なんとも頼りない心地がいたしやした。 機械の出す音はどれもこれも無機質で、こちらの不安や都合など、お構いなしに鳴り響きやす。

そして、最後に手渡されたのは「痰(たん)」を出すための小さな紙コップ。 それをじっと見つめたとき、「ああ、これは夢じゃねぇ、現実なんだ」と、腹の奥がすーっと冷えていくのを感じやした。

ようやくすべてが終わる頃には、結果がどうこうと案ずるより先に、泥のような疲れが体に溜まっておりやした。 隠居の身には、この検査の嵐を乗り切るだけでも、なかなかの大仕事でござんす。