隠居の湯治 有馬温泉 太閤の湯
有馬温泉 太閤の湯
関西で温泉(いでゆ)と言やぁ、どうしても外せねぇのが「有馬(ありま)」の街でさぁ。六甲山の北側に位置するこの湯の里は、日本最古とも言われる歴史を誇り、かつては太閤秀吉公をはじめ、数多の文豪や歴史上の偉人たちがこぞって疲れを癒やしに訪れた場所。老舗の高級旅館が格式高く軒を連ねる風情ある街並みも乙なもんですが、日帰りで時間を忘れてどっぷりと遊び尽くせる、現代的な大お屋敷もござんす。
その代表格こそが、今回ご紹介する「太閤の湯(たいこうのゆ)」でさぁ。
ここは有馬の情緒あふれる温泉街から、のんびり歩いて行ける坂の上に佇む、いわば「温泉の遊園地(てーまぱーく)」。手ぬぐいを片手にした旅人の「あれもこれも入ってみてぇ」という欲張りな願いを、ひとつ残らず全部詰め込んだような贅沢な湯処でしてね。歴史ある町の厳かな風情を肌で感じつつも、一歩足を踏み入れれば、その圧倒的な湯船の多さに思わず心がワクワクと踊っちまいます。
金泉と銀泉の贅沢な競演
さて、有馬の名物と言って絶対に外せねぇのが、あの対照的な二つの名湯「金泉(きんせん)」と「銀泉(ぎんせん)」だ。
まずは、見た目にもおどろおどろしい赤茶けた「金泉」。こいつは地中深くから湧き出たときは無色透明なれど、空気に触れた瞬間に鉄分が酸化して見事な黄金色(に濁る湯)に変わるんでさぁ。鉄分と塩分がこれでもかとたっぷりと含まれておりまして、ひとたび湯船に身を沈めれば、体の芯の芯までカッカと温める力が凄まじい。冬の寒さはもちろん、日頃の凝りや、わしのような爺のくたびれた足腰をじんわりと時間をかけてほぐしてくれる、まさに極上の「薬湯」でさぁ。
一方の、対照的に透き通った「銀泉」は、さらりと軽やかで肌触りがどこまでも滑らか。こちらはラジウムや炭酸を含んでおりまして、皮膚から優しく吸収されて血の巡りを良くし、湯当たりも柔らかいのが特徴でござんす。金泉でカッカと火照った体を、この銀泉で優しく鎮めるように交互に浸かる。この二つの名湯の贅沢な競演を、同じ屋根の下で一度に味わえるなんざ、他所じゃあ滅多に真似のできねぇ至福の極楽でげすよ。
多彩な湯船と歴史散歩
この太閤の湯の本当に凄いところは、その二つの貴重な名湯を、意匠を凝らした「多彩な湯船」で心ゆくまで楽しめることに尽きますな。
天井が高く広々とした屋内の大浴場を抜ければ、六甲の爽やかな風が吹き抜ける眺めのいい露天風呂が待っている。新鮮な湯がコンコンと注がれる源泉掛け流しの湯船もあれば、肌に細かい泡がピチピチと弾ける人工の炭酸泉まである。さらには「岩盤浴(がんばんよく)」なんてぇ、じんわり温めた天然石の上で心地よく寝転ぶ、今風の洒落た蒸し風呂までずらりと揃ってやがる。まさに「湯巡り三昧」、あっちへドボン、こっちへドボンと、温泉好きにとっては身体がいくつあっても足りねぇほど忙しいこってす。
なかでも自由爺として特に面白いと感じたのが、太閤秀吉公が生きた戦国時代や、その後の江戸の世の温泉文化を現代に見事に再現した湯のエリアでさぁ。
安土桃山時代のきらびやかな雰囲気を漂わせる湯殿や、昔の日本人が愉しんでいた蒸し風呂の様子、さらには有馬温泉の歴史にまつわる貴重な展示が各所にありやしてね。単なる汗を流すためだけの銭湯を超えた、まるでタイムスリップしたかのような「湯の歴史散歩」が楽しめるのが実に憎い演出だ。例えるなら、大衆浴場と博物館が一緒くたになったようなもんで、歴史好きの知的好奇心まで心地よく満たしてくれやす。
手ぶらで過ごす極楽タイム
もちろん、湯の他にも見逃せねぇ楽しみが、この大きな屋敷にはお皿の上のご馳走のように並んでおりやす。
広々とした休憩処に、地元の旨い味覚をズラリと揃えた食事処、さらにはお土産物屋までが館内にずらりと軒を連ねているんで、湯上がりの極楽タイムを丸ごとここで過ごせちまう。風呂上がりに冷えたビールをぐいっと一杯やりたい御仁も、但馬の恵みや関西の味を楽しみたい方も、誰もが日常の小忙しさを忘れて思い思いに寛げるのが嬉しいじゃござんせんか。時計の針を気にせずゴロリと横になれば、昭和ののんびりとした湯治場にいるような錯覚さえ覚えやす。
しかも、ありがてぇことに、お洒落な館内着やふかふかの手ぬぐい、バスタオルといった一式がすべて最初の木戸銭(入場料)に含まれてるんで、文字通り「手ぶら」のままでふらりと行っても何ひとつ困らねぇてぇのが、実に行き届いていて気が利いてる。旅の途中に前触れもなく、思い立ったその瞬間に立ち寄れる、この気軽さこそが現代の旅人にとって最高の贅沢というもんでしょう。
歴史と現代の快適さの融合
今回、自由爺としてこの太閤の湯でしみじみと感じ入ったのは、ここには「古い歴史」と「現代の快適さ」の素晴らしい融合があるってことでさぁ。
有馬という古来より受け継がれてきた格式高い名湯を、決して敷居を高くすることなく、今風に楽しくアレンジして現代の私たちに楽しませてくれる。だからと言って決して軽薄なアミューズメントになるんじゃなく、お湯の質も風情も一級品。古き良き湯の力が、日々の暮らしでついた心の皺を伸ばし、日常の煩わしさを綺麗さっぱり忘れさせてくれる……そんな不思議でおだやかな空間でござんした。
湯上がり、浴衣の襟を少し緩めて見上げる六甲の雄大な山並みや、夕暮れ時の風に乗ってどこからともなく香る温泉独特の硫黄と鉄の匂い。有馬の湯は、ただ体を温めるだけじゃなく、こわばった心まで優しく丸ごとほぐす不思議な力を持っておる。そんな温泉旅の真髄を、日帰りでありながらしみじみと贅沢に実感できる、実に素晴らしい場所でござんすよ。皆さんも次の休みにでも、風に吹かれにふらりと出かけてみてはどうでえ?

ここにあるお話(養生草紙)は、すべてワシ個人の体験談やレビューや。お薬や治療の代わりになるもんやないからね。
体の調子がすぐれない時は、無理せんと専門のお医者さんの診断を仰ぐのが一番の養生や。自分の体を一番に大切にしてな。
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