第五話 空中散歩 赤影気分で ドロンと参る

いやはや、驚いた。 二〇二五年、四月。菜の花が黄色い絨毯のように広がる加古川の河原。ワシはついに空飛ぶ魔法の道具、「ドローン」を手に入れたんじゃ。

ワシら世代の男にとって、空を飛ぶのは永遠のロマン。「仮面の忍者 赤影」が大凧に乗って現れる姿に、どれほど憧れたことか。叶わぬ夢を「ゲイラカイト」で紛らわしとったあの頃。退職を境に、あの夢を実現させたくなったんじゃな。

しかし、最初の関所は「国土交通省への登録」。役所への届け出ゆえ、説明書を一言一句間違えんように読み込み、パソコンと格闘。登録を終えた時は、飛ばす前にワシの頭がボーーーッとオーバーヒートしてしもうたわ。

翌日、本体とコントローラーを「満腹(フル充電)」にして、いざ初フライト! スイッチを入れたら「ブウゥゥゥゥーーーンッ!」と羽が回り、その音にびっくり。 飛ばす前に右へ左へ、上へ下へと旋回させて位置を覚えさせる……あーーーめんどくさい!

じゃが、いざ離陸すると、驚愕の世界が待っとった。 空高く舞い上がったドローンの目。手元の画面には、空から見た加古川の輝きと、豆粒みたいに小さくなったワシ自身が映っとるやないか! 「これや! これが赤影が見とった景色か……!」

自分は地面におるのに、心だけが空を飛んどる不思議な感覚。写真も動画も手元でパシャリ。「なんじゃこれ!」と独り言が止まらん。ええ歳した爺が河原でニヤニヤしとう姿は、さぞかし怪しかったことじゃろう。

たった三十分の空中遊泳じゃったが、ゲイラカイトの糸を握りしめとった少年時代には、逆立ちしても見られん世界やった。風に流されそうになって「待て待て!」と焦るのもまた一興。 ええ時代になったもんじゃ。次はどこを撮りに行こうかのう。

拙い話にお付き合いくださり、感謝の極みじゃ。
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