養生草紙 第二巻:白黒(しろくろ)の宣告

えー、その日は朝からしとしとと、嫌な雨が降っておりやした。 懐にねじ込んだ紹介状の封筒を、知らず知らずのうちにギュッと握りしめ、あっしは「がん専門病院」という、なんとも物々しい名の門をくぐったのでございます。

待合室は妙に静まり返っており、時折聞こえる誰かの咳の音だけが、やけに耳に障りやす。

「……次の方、お入りください」

呼ばれて向かい合ったのは、まだうら若い、利発そうな医者殿。 その手元にある絵(画像)を覗き込んで、あっしは言葉を失いやした。 白と黒、その境目があまりにもはっきりしすぎていて……素人のあっしが見ても、「ああ、こりゃあ一筋縄じゃいかねぇな」と、背筋に冷たいものが走ったのを覚えておりやす。

医者殿は淡々と、「まずは詳しく調べましょう。結果が出るまで少し時間がかかります」と仰る。

その「少し」という言葉が、どれほどの長さ、どれほどの重みを持つものか。 あの時のあっしには、まだ露(つゆ)ほども分かっていなかったのでござんす。