太公望の戯れ 第十三話 「欲の皮と届かぬ網。橋の上から逃した大物と、足もとの教訓」 〜届かぬのなら、はじめから無理をさせちゃあかん〜

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風の便り

川面をなでる風が、ほんのり秋の匂いを運んでくる季節になったのう。 昨日の反省を胸に、太い糸を巻き直し、新品の長靴を履いて「今日こそは狙い通りに仕留めたるぞ」と気合十分で出かけた時のことじゃ。 大堰の駐車場に車を停めて、大堰へ向かう途中の橋を渡ろうとした瞬間、川底の影がふと目に飛び込んできたんじゃな。

文明の利器との遭遇

橋の上からそっと見下ろすと、なんと20メートルほど先の水底に、80センチはあろうかというような巨大なナマズがゆらりと佇んどるやんか! 「うわっ、おったぞ……!」 昨日の今日じゃ、道具はすべて完璧に揃っとる。「これはもう、行くしかないわな」とニンマリ顔よ。 そっと息を殺し、新しく買ったばかりの太い糸に、カエルの形をしたゴムの仕掛け(カエルルアーと言うらしい)を結びつけた。橋の上から静かに、静かに……ナマズの目の前へポトンと落としてみたんじゃ。

昔の道具・知恵との比較

次の瞬間、ドッカン!!!と水面が激しく割れた! 「おーーーーッ! やった、食いついたぞ!」 昔、竹竿で小魚相手に遊んどった頃には味わえん、命と命がぶつかり合うような衝撃じゃ! 水しぶきが上がり、竿が大きく円を描く。 「今日は『釣れた』んやない、ワシが狙って『釣った』んじゃ!」 胸の鼓動がドックンドックンと高鳴り、手応えを噛み締めながら、なんとか橋の下の足元まで引き寄せることには成功したんじゃが……。

爺のボヤキ

ここからが本当の地獄じゃった。 自慢の伸びるすくい網(タモ)をシュッと伸ばしてみたものの……なんと、橋が高すぎて2メートルほど長さが足りん! 「あわわわ! 届かんやんか! 顔面蒼白とはこのことよ!」 片手に竿、片手に届かん網を持ったまま、冷や汗がドッと吹き出す。空中ですくうのは絶対に無理じゃと判断し、一か八か、糸の太さを信じて一気に引き揚げる「ごぼう抜き」を選んだんじゃ。 ところが、あと3メートルで手に届くというその時! 魚が大暴れして、ポロッと針が外れてしもた。ドボンと水に落ち、深みへ消えていく大ナマズ……。ワシは橋の上で、ただただ呆然と立ち尽くすしかなかったわい。

自由爺の独白

「欲を出して足場も確かめんと手を出すから、こんなことになるんじゃ」 道具がどれだけ揃っとろうが、足場を確かめずに挑むのは魚にとっても大迷惑な話じゃな。逃げた大物には悪いことをしたが、また一つ大切な教訓をもらったわい。 ま、失敗も含めての釣りじゃ。「次はちゃんと取り込める場所で勝負したるからな」と川に声をかけて、トボトボと家に帰った爺であった。

皆さんも、焦る気持ちが勝って失敗してしもた経験はあるかのう?

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