太公望の戯れ 第十二話 糸を巻き直せば、心も躍る。道具と対話する神聖な夜」 〜狙って獲ってこそ釣り。20ポンドの絆を固く結んで〜

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風の便り

夜のしじまに、虫の音がかすかに混じるようになってきたのう。窓を少し開けると、川の方からしっとりとした夜風が吹き込んできて、肌をくすぐるんじゃ。 昨日の大ナマズとの大立ち回りから一日。足元は冷えるわ、糸は頼りないわで大騒ぎじゃったが、あの強烈な引きの余韻は、今もワシの手にじんじんと残っとる。 「あれは釣ったんとちゃう……完全にあっちに『釣られた』んじゃ」 そんな反省が胸を去らんくてのう。今日は手に入れたばかりの新しい装備を前に、静かに腕を鳴らしておったんじゃ。

文明の利器との遭遇

昨日、釣具屋で手に入れてきた「20ポンド」という太い糸。まるで黒くて太い蜘蛛の糸のように、力強い光沢を放っとるわい。 これを、糸が空になったリールの軸へ結びつける。指先でキュッと結び目を確かめると、まるで新しい魚との「約束」を交わしたような、なんとも神聖な気持ちになるもんじゃな。 くるくるとハンドルを回すと、チチチ……と心地よい音を立てて、太い糸が滑らかに巻かれていく。 「ほう、今度の糸は頼もしいぞ。これならあの怪物が暴れても、びくともせんわい」 横には、魚を傷つけずに針を外せるという「魔法の棒(リリーサー)」と、靴底にガッチリと溝の入った新しい長靴が控えておる。揃った道具たちを眺めとるだけで、ニヤニヤが止まらんようになってきたわい。

昔の道具・知恵との比較

昔はのう、糸が痛んだら指先で引っ張って「まだ切れんか」と確かめ、傷ついた部分だけをチョン切って誤魔化しながら使ったもんじゃ。長靴も穴が開いたらパッチを貼って使い倒したものよ。 仕掛けを作る時間というのは、今も昔も変わらん「男の儀式」みたいなものじゃな。 糸を巻き上げながら、ワシの頭の中は次の釣行のことでいっぱいじゃった。 昨日はたまたま向こうから針に飛び込んできた「棚から牡丹餅」みたいな勝ちじゃった。じゃが、次はちゃうぞ。あの大堰のどのヨレにルアーを投げ込み、どう泳がせて、どのタイミングで仕留めるか……。 「狙った魚を、狙った仕掛けで引きずり出す」 そう心に決めた瞬間、最後の一巻きがクルリと収まったんじゃ。実に気持ちのええ瞬間じゃった。

爺のボヤキ

……と、ここまでは格好のええ話なんじゃがな。 使い終わった古い方の糸を空のプラスチック枠に巻き戻そうとしたら、途中で手が滑って糸くずの山が床にドカンよ! 「あわわ! 絡まった、絡まった!」と、暗い部屋で老眼鏡を掛け直し、一人で糸の知恵の輪と格闘する羽目になったわい。 準備の神聖な空気も、最後の最後で台無しじゃ。こういうドジを踏むあたり、ワシもまだまだ修行が足りんのう。

自由爺の独白

まあ、失敗も含めて道具と戯れる時間は楽しいものじゃ。 太い糸を巻き直し、新しい道具を身につけたら、昨日までの「ただの爺さん」が、少しだけ「狩人」の顔に戻ったような気がするわい。 道具は揃った。覚悟も決まった。 さあ、今からまたあの川へ向かうとしようかのう!

皆さんも、道具を整えているだけでワクワクして夜も眠れなくなった経験はあるかのう?

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