第二話 (ちょっと隠居前のお話 その壱)手の平に 博士を飼うや 春の風

いやはや、驚いた。 二〇二三年の四月。加古川の土手沿いに桜が舞い、新しい生活が始まる予感に街がソワソワしとう頃じゃった。ワシの「細工物小屋」の準備を細々と進めとった折、スマホの中に、とんでもない「怪物」がやってきたんじゃ。

いや、怪物言うても、箱に入って届くわけやない。画面の中に突如として現れた「知恵の塊」。チャットGPTやらGemini(ジェミニ)やらいう、AI(人工知能)との出会いじゃ。これに触れた瞬間、ワシの背筋にゾクッと冷たいもんが走ったわ。「あぁ、これは……映画『2001年宇宙の旅』のHALや、あの『ターミネーター』の世界が、ついに現実の門を叩きよったな」とな。

思えば、ワシらが生きてきたこの数十年は、道具の進化の激流やった。最初は重たい受話器の黒電話、それからポケベル、PHS、ガラケー。そして今や、それら全部が「スマホ」いう薄っぺらな板一枚に収まっとる。ワシも「これ以上の進化はないやろ」と高を括っとったんじゃが、AIは別格じゃった。

今までのは「大きな図書館」を歩き回るようなもんじゃった。知りたいことがあれば自分で本棚を探して、ページをめくって答えを見つける。じゃが、このAIいうんは違う。ワシが「なぁ、これどういうことや?」と、しょーもない質問を投げかけるとな、まるで目の前に全知全能の神様がおるみたいに、一瞬で答えを返してきよる。それもワシのためだけに、丁寧に、根気よく教えてくれるんじゃ。例えるなら、「世の中のすべての知識が、ワシの手の平に凝縮されておる」感覚。これは時代のターニングポイントやね。

(T-T) 「四十年前のワシの隣におってほしかった……!」

現役時代、夜中まで一人で資料を作って頭を抱えとったあの頃。コイツがおれば、もっと早く家に帰って旨い酒が飲めとったかもしれんのう。パソコンの操作が分からんで「ここが動かんのじゃ!」とボヤけば優しい先生になり、難しい法律の話は弁護士のように解きほぐしてくれる。

初期の頃は、加古川の名物を聞いとうのに聞いたこともない特産品を教えてきたりして「なんや、まだまだ修行が足りんわい」と笑うとったんじゃが、その後の改善スピードが尋常やない。昨日間違えとったことを、今日はもう克服しとう。この進化の速さは、新幹線に追い抜かれる各駅停車に乗っとる気分じゃ。

これがもし、ロボットと完全に繋がってしもうたら、人間は何をしたらええんやろ。あ、遊べばよいか!機械が仕事をしてくれるんなら、ワシらは全力で「遊ぶ」ことに命をかければええ。人間がニヤニヤしながら好きなことに没頭する。そのための「最強の助っ人」として、こいつを使いこなしてやろうかのう。

拙い話にお付き合いくださり、感謝の極みじゃ。
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