隠居の湯治 ラフォーレ箱根強羅 湯の棲家

箱根のイメージと、強羅に佇む「湯の棲か」

箱根と聞けば、若い頃のワシは「賑やかな観光地」だの「溢れかえる人混み」なんぞという言葉が、どうにも先に立っておったわい。どこへ行っても人、人、人で、ゆっくりと骨を休めるには少々気忙しい場所だと、敬遠しがちな時期もあった。じゃが、不思議なもんじゃな。お互いに年を重ねてから改めてこうして足を運んでみると、箱根という土地も実に奥が深く、底知れない魅力に満ちた場所だとつくづく感じさせられる。

そんな箱根の山の手、木々に囲まれた強羅の静寂の中に佇むのが、「ラフォーレ箱根強羅 湯の棲(すみ)か」じゃ。

ここは、世間の喧騒から一歩身を引き、静かに腰を落ち着けて大人の時間を過ごしたいモンにとっては、まさに誂え向きの宿だと感じたのう。車を降りて一歩敷地へ入れば、都会のコンクリートジャングルとは全く違う、ひんやりとした山の匂いが胸いっぱいに広がり、それだけで旅の期待に胸が躍るわい。

大涌谷源泉のまっとうな湯

さて、宿に着いたら何をおいても、まずは旅の垢を落とすべく自慢の湯殿へ向かうのが作法じゃな。

まず、ここは何と言っても湯がええ。大涌谷源泉から引かれた、由緒正しき硫酸塩・塩化物泉じゃ。服を脱ぎ捨て、湯気で白く煙る浴槽に体をそろりと沈めた瞬間、「おぉ、これぞ箱根のまっとうな湯じゃ」と、思わず膝を叩きたくなるほど深く合点がいく。

この湯の心地よさを例えるなら、ペラペラとした軽い上着じゃなく、職人がお天道様の光をたっぷり吸わせた真綿を詰めて縫い上げた、あの重みのある「しっかりした綿入れ」を体にそっと羽織ったような感覚よ。派手なヌルヌル感があるわけじゃないが、じわじわと体の奥の奥、骨の芯まで心地よい熱が染み込んでいってな。湯から上がってしばらく経っても、体の中がカッカと温かく、一向に汗が引かん。これこそが、世間で言う「保温の湯」ちゅうやつじゃろうな。

湯の力のおかげか、爺のガタのきた肌も不思議と落ち着くのう。美肌効果だの血行促進だのといった難しい化学の講釈や能書きは一切抜きにして、お湯の中で自分の腕をさすってみれば、「あぁ、いま体が素直に喜んでおる」というのが、理屈じゃなく五感でハッキリとわかるわい。

大浴場の静寂と、客室露天という「己の湯治小屋」

大浴場の造りもまた、ワシ好みの広すぎず、狭すぎずの絶妙な塩梅じゃ。他のお客の気配は適度にあるが、お互いに無粋な干渉をしない心地よい距離感が保たれておる。

そっと外の露天風呂へ出れば、箱根の豊かな山の空気が、遮るものなくそのまま湯船へと流れ込んでくる。耳を澄ませば聞こえてくるのは、サワサワと梢を揺らす風の音と、鳥のさえずり、木々のざわめきだけじゃ。ここには、現世の賑やかなテレビの音も音楽も一切要らん。ただ湯に肩までどっぷりと浸かって、ぼんやりと遠くの山並みを眺める。現代人が忘れがちな、こういう何もしない時間こそが、実は一番の贅沢なんじゃよな。

そして、この宿の真骨頂であり、最大の贅沢は、なんというても客室露天風呂じゃろう。

大涌谷の源泉かけ流しという極上の恵みを、自分の好きな時間に、誰の目も気にせず、誰にも気を使わず心ゆくまで楽しめる。夜中にふと目が覚めて、夜の帳が下りた静寂の中で一風呂。朝、遮るもののない鳥の声を聞きながら、朝もやの中で朝風呂を贅沢に一風呂。

自分の部屋の縁側からそのまま湯船へドボンと飛び込めるお気楽さは、まるで山の中に自分専用の小さな湯治小屋を持ったような、何物にも代えがたい極楽の気分に浸れるわい。異国の忙しないからくり(スマホ)の通知を切り、お湯と自分だけが向き合う時間は、まさに至福の一言に尽きる。

「棲か」という名に相応しい和モダンの空間

建物全体は、伝統的な意匠と現代の快適さを上手に融合させた、和モダンで落ち着いた大人の造りじゃ。

目を引くような派手な装飾や成金染みたきらびやかさはどこにもないが、その代わりに温かみのある木の質感と、大きな窓から差し込む優しい自然光が館内を柔らかく満たしておる。なるほど、これなら「棲(すみ)か」という一風変わった名がよう似合うておるのも頷けるわい。ここには、単に一晩「泊まる」というよりは、お気に入りの別荘にしばらく「住んでいる」かのような、深い安心感と居心地の良さが確かに数日間の生活感として宿っておるんじゃ。

若い頃のワシなら、旅の夜にはもう少しハデな刺激や、賑やかなお土産物屋の灯りを欲しがったかもしれん。だが、白髪交じりになった今は、この五感に静かに染み渡る強羅の静けさと、大涌谷の湯のどっしりとした重みが、何よりもありがたく身に沁みる。

自由爺としては、時計の針を少し巻き戻して、ただ「何もしない贅沢」を心ゆくまで身体に教えてくれる格好の隠れ家として、温泉を愛する皆衆にそっとおすすめしておきたいのう。湯上がりに火照った肌を箱根の涼しい風に晒しながら、またこの極上の湯に会いに来ようと、心の中で静かに誓った自由爺でござんした。次の休みにでも、大切な手ぬぐいを片手に、ふらりと出かけてみてはいかがかな?

【ワシからのお願い(免責事項)】
ここにあるお話(養生草紙)は、すべてワシ個人の体験談やレビューや。お薬や治療の代わりになるもんやないからね。
体の調子がすぐれない時は、無理せんと専門のお医者さんの診断を仰ぐのが一番の養生や。自分の体を一番に大切にしてな。
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