隠居の湯治 三田天然温泉 寿の湯
三田天然温泉 寿ノ湯
兵庫は三田(さんだ)の国。神戸の賑やかな港町や西宮の住宅街をさらに越え、車や電車をトコトコと走らせていくと、いつしか窓の外にはなだらかな山並みと、青々とした田園風景が広がりやす。空気の匂いがふっと変わり、胸いっぱいに吸い込めば日頃の雑音もどこかへ消えていく。そんな緑が深くて静かなこの三田の地に、令和の世になって新しくできたモダンな湯処がありやす。
その名も「三田天然温泉 寿ノ湯(ことぶきのゆ)」。
新築の綺麗な佇まいでありながら、どこか懐かしい響きがすると思ったら、それもそのはず。なんでも八十年も前に地元で愛されていた「寿湯」てぇ銭湯の名を継いで、最先端の温泉施設として見事に復活を遂げたんだとか。古い歴史と暖簾(のれん)を今の世に蘇らせ、地元の記憶を未来へ繋ぐなんざ、なんとも粋で心憎い話じゃござんせんか。
らいふすたいる温泉
大きな暖簾をくぐって一歩中へ入ると、そこはただの風呂屋とは明らかに空気の質が違いやす。
「らいふすたいる温泉」なんて、いかにも令和らしいお洒落な横文字の看板を掲げちゃいるが、小難しいことを考える必要は一切ねぇ。要は「一日中、自分の好きなように過ごせる現代の極楽長屋」ってことでさぁ。
ある人は湯に浸かってぼんやりとし、ある人は岩盤で心地よい汗をかき、またある人はお気に入りの本に没頭し、お腹が空いたら旨い飯を食う。お互いが干渉することなく、思い思いの贅沢を貪っている。まるで温泉街がまるごと一軒の大きな家になったような、不思議な安心感と居心地の良さがここにはありやす。
ナトリウム・カルシウム–塩化物泉
さて、何はともあれ、まずは旅の垢を落とすべく自慢の湯殿へ向かいやしょう。
肝心の湯は、大地の底から湧き出る「ナトリウム・カルシウム–塩化物泉」だ。これがまた塩気を含んだ実に豊かな泉質でしてね。わしのような爺の冷え切った体や、日頃の不摂生で痛む節々を、皮膚の奥の奥、骨の芯からじっくりと温めてくれる「熱の湯」でさぁ。湯船から上がった後も、まるで毛布に包まれているかのようにポカポカとした温もりが持続する。まさに日頃の疲れを癒やす養生には、持って来いの極上湯でげす。
湯巡り
しかも、ここの浴場は湯船が七つも揃ってやがるから飽きさせやせん。
手足を思いっきり伸ばせる大きな内湯を筆頭に、一人占めの贅沢を味わえる五右衛門風呂風の「壺湯(つぼゆ)」、お天道様や流れる雲を仰ぎ見ながらまどろむ「寝湯」、肌をパチパチと心地よく刺激するシュワシュワの「炭酸泉」まである。
さらに、本格的なサウナに身を沈めて一汗かき、キリッと冷えた水風呂で締めれば、頭の中までシャキッと爽快に蘇りやす。その日の気分や体調に合わせて、「あっちへドボン、こっちへドボン」と気ままな湯巡りを洒落込めるのが、温泉好きにはたまらなく嬉しいねぇ。
岩盤浴
そして、寿ノ湯の隠れた自慢は、なんと言っても「岩盤浴(がんばんよく)」の充実っぷりでさぁ。
ただ寝転ぶだけじゃねぇ、趣向を凝らした部屋がいくつも用意されておる。ヒマラヤの天然塩を贅沢に敷き詰めたミネラルたっぷりの部屋、十三種類もの和漢薬草が優しく香る情緒あふれる部屋、それに神秘的な黒い石(ゲルマニウム)の熱気に包まれる部屋まである。
仄暗い照明の中、じわじわと身体の芯が温まり、普段は出ないようなサラサラとした良質の汗が溢れ出てくる。体の中の悪いもん(毒素)をすっきりと出しちまえば、不思議と胃腸の調子もシャキッと整うってぇ寸法さ。これぞまさに究極のデトックス、心も体も軽くなりやす。
図書室
汗をかいて身体が軽くなったところで、さらに驚かされるのが、一万冊もの本が美しく並ぶ「図書室(らいぶらりー)」だ。
壁一面の本棚には、懐かしい絵草紙(漫画)から、旅の本、暮らしを彩る実用書までズラリと揃っておる。湯上がりに淹れたての珈琲(こうひー)をゆっくりと啜りながら、長屋の居間みてぇにふかふかのソファやクッションにゴロリと寝転んで本を読む。
窓から差し込む三田の柔らかな光を感じながらページをめくる。この時間が意外なほど、いや、おそろしく落ち着くんでさぁ。時計の針の進みが、いつもよりずっと遅く感じられやす。
湯だけじゃない、長居を楽しむ隠れ家
お腹が減ればお洒落な飯処で旨い料理が待っているし、身体をさらに解きほぐす揉み療治(リラクゼーション)もある。至れり尽くせりとはまさにこのことで、一度ここに入っちまったら、靴を履いて現世に帰るのがどうにも億劫になっちまうのが玉にキズだ。
日帰りでふらりと訪れたはずなのに、気がつけばお天道様が西の山に沈むまで一日中居座りたくなる。
ここは単なる汗を流すための風呂屋じゃねぇ。湯を愛で、空間を愛で、時間を愛でる──「湯だけじゃない、長居を楽しむ大人の隠れ家」でござんすよ。日々の小忙しさに少しばかり疲れたら、皆さんも手ぬぐいを片手に、三田の極楽へ長居をしに出かけてみてはいかがでえ?

ここにあるお話(養生草紙)は、すべてワシ個人の体験談やレビューや。お薬や治療の代わりになるもんやないからね。
体の調子がすぐれない時は、無理せんと専門のお医者さんの診断を仰ぐのが一番の養生や。自分の体を一番に大切にしてな。
万が一、掲載した情報でトラブルが起きても、当サイトでは責任を負いかねるんじゃ。すまんねぇ。
詳しいお約束事は、こちらの「プライバシーポリシー・免責事項」にまとめてあるで、一読しておくれやす。
