養生草紙 第二十二巻:舞い上がる心、即答の「今日から帰ります!」

いやはや、人生捨てたもんやないな。  抗がん剤の初陣から二週間が過ぎた頃、先生から「十日間ほど、家に帰ってもええですよ」と、夢のような言葉をいただいたんじゃ。

最近の医療は「クオリティ・オブ・ライフ」、つまり生活の質というやつを大事にしてくれるらしくてな。病院でせにゃならん処置がない期間は、住み慣れた家で過ごすんが一番の養生になるという考えらしい。それを聞いた瞬間、もう腹の奥から込み上げる笑いが止まらなんだ。心の中で「うれしーーー!」と叫び倒したわい。

そんなワシの浮かれっぷりを見透かしたように、先生がいつもの淡々とした調子で釘を刺してきおった。  「自由爺さん、治ったわけやありませんよ。あくまで自宅療養です。無理は厳禁、体調が悪うなったらすぐに連絡しなされ」とな。分かっとる、分かっとるんじゃが、今のワシにはその小言さえ、お祝いの言葉のように聞こえてしもうたんじゃな。

「いつから帰られますか?」という問いに、ワシは食い気味に、それはもう即答で「昼から!」と答えてしもうた。  それを見ていたあの元気をくれた看護師さんが、「ふふっ」と吹き出して笑うてな。四十八にもなって、子供が遠足を待ちきれん時のような顔をしてしもうたかと思うと、ちぃと恥ずかしくなって、「いかん、もう少し落ち着かにゃあ」と反省した瞬間じゃった。

でものう、この坊主頭で、久しぶりに我が家の敷居をまたげるんや。  病院の青いプラスチックの器やなくて、家の茶碗で飯が食える。それだけで、癌細胞もしり込みして逃げ出していくような気がするわい。

ま、先生の言う通り、羽目を外しすぎんように、家でもボチボチと養生することにするわ。  皆も、当たり前の「我が家」のありがたみ、たまには思い出してみてな。

さて、荷物をまとめて、一足お先に失礼しますかな。  次は我が家の縁側から、ブログを更新するかもしれんぞ。

一時の帰宅、精一杯楽しんでくるわ。

拙い話にお付き合いくださり、感謝の極みじゃ。
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