細工物小屋
第六話 ピンポン玉 目玉となって 川を往く

いやはや、驚いた。 二〇二五年、七月。じりじりと太陽が照りつけ、セミが合唱しとう加古川。ワシの首筋には、最新の「魔法の目玉」……「アクションカメラ」が鎮座しとう。 釣りをしだして、自分がどんなふうに魚と戦っとる […]

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細工物小屋
第五話 空中散歩 赤影気分で ドロンと参る

いやはや、驚いた。 二〇二五年、四月。菜の花が黄色い絨毯のように広がる加古川の河原。ワシはついに空飛ぶ魔法の道具、「ドローン」を手に入れたんじゃ。 ワシら世代の男にとって、空を飛ぶのは永遠のロマン。「仮面の忍者 […]

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細工物小屋
第四話 魔法の箱 粘土細工は 脳の毒

いやはや、驚いた。 二〇二五年、三月。加古川の河原に梅の香りが漂い、ようやく冬の終わりが見えた頃。退職後のワシが最初に手を出したのが「3Dプリンター」という魔法の箱じゃ。 「自分で作ったルアー(疑似餌)で大きな […]

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細工物小屋
第三話 (ちょっと隠居前のお話 その弍)魔法の耳 過去の声を 紙に書く

いやはや、驚いた。 二〇二四年の十二月。加古川の冷たい浜風が首筋をすり抜けていく季節。世間は正月準備で忙しない頃、ワシは退職という大きな節目を数ヶ月後に控え、ある「奇妙な板」を手に入れた。それが「AIレコーダー […]

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細工物小屋
第二話 (ちょっと隠居前のお話 その壱)手の平に 博士を飼うや 春の風

いやはや、驚いた。 二〇二三年の四月。加古川の土手沿いに桜が舞い、新しい生活が始まる予感に街がソワソワしとう頃じゃった。ワシの「細工物小屋」の準備を細々と進めとった折、スマホの中に、とんでもない「怪物」がやって […]

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養生草紙
養生草紙 第二十四巻:おかえりと青い器、慣れという名の再会

いやはや、とうとう戻ってきてしもうた。二度目の入院初日じゃ。 病棟へ足を踏み入れるなり、看護師さんから「おかえりー! ゆっくりできましたかー?」と明るう声をかけられてな。その笑顔は嬉しいんじゃが、内心では「ああ、帰ってき […]

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養生草紙
養生草紙 第二十三巻:普通という名の贅沢、再戦への刺身一切れ

いやはや、十日間の自宅療養というのは、瞬きする間もなく過ぎ去ってしもうた。  病院の小さなテレビやなくて、家の大きな画面で映画を堪能し、お気に入りの音楽をスピーカーから流す。村上春樹の本をゆっくり読み返したり、大きなパソ […]

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養生草紙
養生草紙 第二十二巻:舞い上がる心、即答の「今日から帰ります!」

いやはや、人生捨てたもんやないな。  抗がん剤の初陣から二週間が過ぎた頃、先生から「十日間ほど、家に帰ってもええですよ」と、夢のような言葉をいただいたんじゃ。 最近の医療は「クオリティ・オブ・ライフ」、つまり生活の質とい […]

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養生草紙
養生草紙 第二十一巻:手のひらの魔法、退屈を溶かす「つながり」

いやはや、抗がん剤の初陣から一週間。  先生から「一週間は安静にしときなされ」と言われとったんで、気分転換に外の空気を吸いに行く以外は、大人しくベッドで横になっとったんじゃ。 毎日欠かさず受けとる放射線治療も、相変わらず […]

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養生草紙
養生草紙 第二十巻:抗がん剤と放射線、拍子抜けの初陣

いやはや、案ずるより産むが易しとは、まさにこのことじゃな。 抗がん剤を投与した翌日の朝。おそるおそる目を覚ましてみれば、体調は至って普通。いつも通りに朝飯を平らげ、先生の巡回を受け、これまたいつもの検査を済ませ……。「あ […]

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